歴史を築いた偉大なベーシスト達 第11回
このシリーズでは、これまでは主にエレクトリック・ベース奏者を紹介してきましたが、今回初めてバリバリのクラシック界のコントラバス奏者を紹介させていただきます。
弦楽器の中で最も音域が低く、通常はオーケストラのボトムを支える縁の下の力持ち的な役割のコントラバスです。

なので、決してメロディーを軽やかに奏でる事に向いているとは言えません。

フランスの作曲家、サン・サーンスの組曲「動物の謝肉祭」第5曲「象」はコントラバスがフューチャーされていますが、ご存じ方はお分かりになると思いますが重々しい鈍重なイメージです。コントラバスの世間一般のイメージです。
ゲーリー・カー

ゲーリー・カー(Gary Karr 1941年11月20日~)

ゲーリー・カーはある意味鈍重な楽器である「コントラバス」の可能性を極限まで引き出し、ソロ楽器としても十分活躍できる事を証明した第一人者です。

彼はアメリカ人ですが、ソリストとして最初に脚光を浴びたのは1962年にバースタイン指揮のニューヨーク・フィルとの共演で、チェロのソロ曲として有名な「象」と同じくサン・サーンスの「白鳥」をコントラバスでチェロと同じ音域で見事に弾いた時でした。

それ以降ゲーリー・カーはコントラバスのソリストの第一人者として数多くのアルバムをレコーディングし、世界中でコンサート活動を行いました。
コル・ニドライ

数あるゲーリー・カーのアルバムの中でも僕はこの「コル・ニドライ」が最も好きです。表題曲の「コル・ニドライ」は19世紀から20世紀にかけて活躍したドイツの作曲家、ブルッフの作品で本来はチェロのための協奏曲です。

ただでさえチェロの楽曲をコントラバスで演奏するには超絶技巧が必要とされるのに、その技巧を全く感じさせずに朗々と音楽的に素晴らしい演奏を披露しています。

1980年に日本でレコーディングされたこのアルバムは、特にオススメのアルバムです。

僕の宝物ですが画像のCDは当時、ゲーリー・カーのコンサートの行った時に会う機会があり、彼と長年のパートナーであるピアノのハーモン・ルイスにサインをしてもらいました。二人とも気さくなとても感じの良い方でした。
1611年製 アマティ

ゲーリー・カーの使用しているコントラバスは20世紀中ごろまで活躍したコントラバスの名手であり、指揮者、作曲家として活躍したロシア人、セルゲイ・クーセヴィツキーの未亡人が彼の演奏を聴いて「この人なら!」と思い、クーセヴィツキーの愛用した「1611年製アマティ」を贈られる事になりました。

”アマティ”とは1550年から約200年に渡りイタリアで活躍した弦楽器製作者一族です。

しかし・・・1611年製って・・・凄すぎです・・・リアル”関ヶ原の戦い”の少し後です。
徳川家康がまだ生きている時代です!

400年の時間が楽器のクオリティーを証明しています。


ゲーリー・カーは2001年にコンサート活動からの引退を発表し、以降後進の指導に専念していましたが、大の親日家である彼は2019年に来日して特別に何公演かのコンサートを行いました。

今でこそコントラバスのソリストはそれなりの数いますが、最初のソリストとしての地位を確立したゲーリー・カーの功績は計り知れないものがあります。

お聴きになられた事のない方には是非とも一度は聴いていただきたい、魂を揺さぶられる孤高の演奏家です。

今回はこのシリーズで初めてクラシックの演奏家を紹介させていただきました。(サトーB)