歴史を築いた偉大なベーシスト達 第8回
春の足音を少しずつ感じる今日この頃です・・・

「新富町のサウンドオアシス」として皆様に良質なサウンドをご提案させていただいている当店「on and on」に散歩がてら、お気楽にお越しください。
このシリーズもついにこの人を紹介する日が来ました。

今回は僕の個人的な思い入れが相当強いです。

この人のベーシストとしての世間一般の知名度はほとんどありません。
Dee Murray

Dee Murray(1946年~1992年)

以前もこのブログでエルトン・ジョンに関する記事を書きましたが、ディー・マレイはエルトン・ジョンの全盛期を支えたベーシストです。

1970年代から現在に至るまで世界で最も成功を収めたアーティストの一人であるエルトン・ジョンですが、彼の成功はもちろんエルトン本人の類まれなソングライティング能力と歌唱力があってこそですが、その実力以外にもいくつかの運命的な出会いが成功のは要因となっている事は確かです。

”運命的な出会い”その1は作詞家バーニー・トーピンとの出会いです。作詞が苦手なエルトンがデビュー前にバーニーと出会い、コンビを組んで次々と名曲を生み出して行きます。代表曲「Your Song」も、そんな時期に誕生しました。
エルトン&バーニー

残念ながら英詞の美しさ、素晴らしさは僕には分かりませんが欧米人が聞いたらバーニーの詩は相当心に響く、美しい詩なんだろうなと想像できます。

そして、もう一つ特筆すべきはエルトン・ジョンの世界での地位を揺るぎないものにした1970年代半ばまでの活動をレコーディングからツアーまで支えたバンドメンバーの素晴らしさです。それぞれが単なる”サポートメンバー”を遥かに超えた”アーティスト”です。

そのエルトン・ジョンの全盛期を築いた主要メンバーは以下のメンバーです。
Elton John&His Band

Elton John/Vo.Pf(上中央)
Davey Johnstone/Gt.Cho(下左)
Nigel Olsson/Dr.Cho(上右)
Dee Murry/Ba.Cho(上左)
Ray Cooper/Per(下右)


このメンバーで創り出すサウンドは、雇われのスタジオミュージシャンのサウンドとは全く異なり、当時はアルバムにも「Elton John&His Band」とクレジットされていましたが、エルトンを含めた5人の完璧な「Band Sound」が存在していました。

「Goodbye Yellow Brick Road」(1973年)、「Caribou」(1974年)、「Captain Fantastic And The Brown Dart Cowboy」(1975年)の3枚のアルバムが「Elton John&His Band」という”Band”の絶頂期です。ストリングスやホーンセクションのアレンジは別にして、曲の骨格を形成する基本的なバンドアレンジはアレンジャーに任せることなくバンドで相談して創り上げています。もとよりエルトンとバーニーの紡ぎだす楽曲は、弾き語りでも十分成立するクォリティーですが、それを更に5人の力で極上なバンドサウンドに仕上げています。

そんな「Elton John&His Band」の中でもディー・マレイのベースはアンサンブルの骨格を築く至宝のベースです。

エルトンの楽曲自体はシンプルな曲が多いです。例えば「Candle In The Wind」という有名な曲があります。この曲のオリジナルはアルバム「Goodbye Yellow Brick Road」に収録されていて、元々はマリリン・モンローのことを歌った曲でしたが、1997年にダイアナ妃が交通事故で亡くなった際に追悼ソング「Candle In The Wind 1997」として歌詞を変えて弾き語りバージョンでリメイクされシングルCDで発表されました。
Candle In The Wind 1997

ちなみにこの「Candle In The Wind 1997」のセールスは3,300万枚を記録してシングルCDの売り上げとしては今現在も歴代1位を保持しています。(シングルレコードも含めると歴代2位で、1位はビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」です。)

この曲自体はAメロBメロだけの構成で1コーラスで、それを3コーラスやっているだけのシンプルな曲です。オリジナルのバンドバージョンでのディー・マレイのベースプレイを是非ともお聴き頂きたいです。1コーラス目、2コーラス目、3コーラス目と実に自然にベースの手数を増やして曲を盛り上げています。その「手数の増やし方」のセンスがメロディーの邪魔をすることなく本当に見事です。

ディー・マレイのこのような功績は他の曲でも随所に見受けられます。正に「Elton John&His Band」の縁の下の力持ちです。

他にも「Rocket Man」でのハイポジションにおけるスリリングな半拍3連のフィルや「Bennie And The Jets」での地を這うようなベースプレイは鳥肌ものです。

ディー・マレイは残念ながら1992年に45歳の若さで癌のために他界してしまいました・・・

しかし彼の残した名演は多数のエルトン・ジョンのアルバムで聴くことができます。そのプレイは50年近く経った現在でも色あせることなく輝きを放ち続けています。

今回は世間的には無名ですがエルトン・ジョンの全盛期を支えた真の実力者ベーシスト、Dee Murrayを紹介させていただきました。(サトーB)